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「初夢はいつの夢か」は、引く辞書によって答えが少しずつ違う問いです。違うのには理由があって、初夢と呼ばれる夜は、暦の仕組みや正月の過ごし方とともに時代ごとに移ってきました。
このページでは、コトバンクで読める6つの辞書・事典の記述を表に並べ、2027年の暦に当てはめています。後半では、一富士二鷹三茄子の由来と「続き」の言い習わし、宝船や獏(ばく)のように、良い夢を願い、悪い夢をやり過ごすために使われてきた習わしを、出典を確かめられたものに絞って紹介します。
初夢はいつ見る夢か ― 辞書と事典の説明を並べる
まず、辞書と事典が初夢をどの夜の夢としているかを、VEIL編集部で並べました。どれもコトバンクの「初夢」の項で読めます。
| 辞書・事典 | 初夢として挙げる夜 | あわせて書かれていること |
|---|---|---|
| デジタル大辞泉 | ふつうは元日または2日の夜 | 古くは節分の夜の夢を指した |
| 精選版 日本国語大辞典 | 節分の夜から立春の明け方/大晦日の夜から元日の朝/元日の夜/2日の夜 | 早い用例に西行の『山家集』の歌を挙げる |
| 改訂新版 世界大百科事典 | 2日の夜 | 2日が仕事始めのため。江戸では大晦日や元日の夜、のちに2日の夜とした |
| 日本大百科全書(ニッポニカ) | 正月2日の夜に落ち着いたらしい | 節分の夜から除夜・元日の夜へ移り、「事始め」の2日の夜に定まった |
| ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 | 2日の夜 | 旧暦では元日が立春の近くにあったため、古くは節分の夜の夢を初夢とした |
| 百科事典マイペディア | 2日の夜 | はじめは除夜の夢で、江戸中期から元日の夜、事始めが2日なので2日の夜へ |
並べてみると、6つのうち4つが最終的な答えとして「2日の夜」を挙げ、大辞泉は「元日または2日の夜」と幅を持たせています。日本国語大辞典は意味を時代順に重ねて載せていて、大晦日の夜から元日の朝にかけての夢も、そのひとつに数えています。
どの説を採るかを一つに決める決まりは、確認した辞書・事典には書かれていません。元日の夜と2日の夜の両方を初夢の候補として覚えておくと、どちらの説明に出会っても話が合います。
なぜ「2日の夜」なのか
2日の夜が初夢になった理由として、複数の事典が挙げているのが「事始め」です。日本大百科全書・ブリタニカ・マイペディアは、正月2日が新年の物事を始める事始めの日だったことを理由に挙げ、世界大百科事典は、2日が仕事始めなので2日に見る夢を初夢といった、と説明しています。
大晦日の夜が外れていった理由について、マイペディアは、除夜には寝ない習慣のせいか、と推測の形で書いています。年越しの夜を起きて過ごすなら、その夜の夢は見にくくなります。
初夢が特別な夢だった理由
初夢がここまで気にされてきたのは、その年の吉凶を占う「夢占(ゆめうら)」と結びついていたからです。世界大百科事典は、夢は人と神仏が交わる回路と信じられ、年の変わり目に神仏のお告げを知る性格が強かったと説明しています。いまの夢占いのように心の状態を読むというより、年の初めに届く知らせとして受け止められていたことになります。
2027年の初夢はいつ? 暦に当てはめる
上の説を、2027年の暦に当てはめると次のようになります。曜日は国立天文台の暦要項(2027年)の曜日表、節分と立春の日付は同じ暦要項の二十四節気および雑節によります。
| 初夢とする説 | 寝る夜 | 目覚める朝 |
|---|---|---|
| 大晦日の夜の夢 | 2026年12月31日(木) | 2027年1月1日(金・元日) |
| 元日の夜の夢 | 2027年1月1日(金) | 1月2日(土) |
| 2日の夜の夢 | 1月2日(土) | 1月3日(日) |
| 節分の夜の夢(古い説) | 2月3日(水・節分) | 2月4日(木・立春) |
2027年は元日が金曜日なので、元日の夜の説でも2日の夜の説でも、目覚める朝は土曜日か日曜日です。古い説の節分は2月3日(水)で、立春は翌4日(木)です。
宝船の絵を敷くなら、2日の夜
宝船の絵を枕の下に敷いて寝る習わしは、デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書のいずれも正月2日の夜のこととして書いています。2027年なら1月2日(土)の夜です。古くは除夜や節分の夜の行事だったとも説明されています。
一富士二鷹三茄子の由来 ― 江戸時代からすでに諸説あった
一富士二鷹三茄子は、夢に見ると縁起が良いとされるものを順に並べた言葉で、とくに初夢についていわれます(コトバンク「一富士二鷹三茄子」)。ブリタニカ国際大百科事典は、この三つの夢を吉とする俗信は江戸時代に生まれたと書いています。
日本国語大辞典が早い用例に挙げるのは、1784年の狂歌集『巴人集』の一首です。せっかく見た一富士二鷹三茄子の夢を「夢ちがへして貘にくはすな」と詠んでいて、後で紹介する夢違えや獏の習わしが、この頃にはもう一富士二鷹三茄子と一緒に語られていたことがわかります。
由来について、日本大百科全書は、この諺が広まった江戸時代中期にはすでに諸説があったとしたうえで、次の三つを紹介しています。
| 説 | 富士 | 鷹 | 茄子 | 紹介している辞書・事典 |
|---|---|---|---|---|
| 駿河の名物を並べた | 富士山 | 鷹 | 茄子 | 日本大百科全書(最も有力とする)、ことわざを知る辞典 |
| 駿河で「高い」ものを並べた | 富士山 | 愛鷹山(足高山) | 初物の茄子の値段 | 日本大百科全書(徳川家康が挙げたとする説)、デジタル大辞泉、ことわざを知る辞典 |
| 言葉の縁起を重ねた | 高く大きい | つかみ取る | 「成す」に通じる | 日本大百科全書、ことわざを知る辞典 |
駿河の名物を並べたという説
日本大百科全書が最も有力とするのが、駿河国(いまの静岡県中央部)の名物を順に挙げたという説です。根拠として、江戸時代の国語辞書『俚言集覧(りげんしゅうらん)』が駿河の名物を「一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭」と並べていることを挙げています。三つで終わらない並びも、江戸時代の辞書に書き留められていたわけです。
駿河で高いものを並べたという説
一に富士山、二に愛鷹山、三に初物の茄子の値段と、駿河で「高い」ものを並べたという説もあります。この読み方では、二番目の「鷹」は鳥ではなく、駿河の愛鷹山(足高山)を指すことになります。日本大百科全書は、徳川家康が挙げた駿河の高いものの順位に由来する、という形でこの説を紹介しています。
言葉の縁起を重ねたという説
富士は高く大きく、鷹はつかみ取り、茄子は「成す」に通じる。三つとも縁起の良い言葉に重なるので並べた、という説です。夢を言葉から読む考え方は、ほかの夢の言い伝えにもあります。日本大百科全書の「夢占」の項は、夢の読み方に直接の連想と間接の連想があるとし、歯が欠ける夢の「欠ける」に注目する読み方を、直接の連想の例に挙げています。
はじめから三つ揃っていたわけではない
ことわざを知る辞典は、江戸前期の用例には「一富士二鷹」までで止まるものや、三番目が定まっていないものがあると指摘しています。そのうえで、意外でどこか可笑しみのある「三茄子」が加わって、いまの形に落ち着いたのだろうと見ています。富士と鷹の縁起はすぐ飲み込めるのに、茄子だけは理由がすぐには浮かばない。その引っかかりが、かえってこの言葉を覚えやすくしたのかもしれません。
一富士二鷹三茄子の続き ― 四扇五煙草六座頭と四葬式五火事
一富士二鷹三茄子には「続き」があると聞いたことがある人もいるはずです。確認できた続きは、出どころの違う二つの系統に分かれます。
| 続き | 出てくる資料 | 並びの性格 |
|---|---|---|
| 四扇・五煙草・六座頭 | 江戸時代の国語辞書『俚言集覧』(日本大百科全書「一富士二鷹三茄子」の項による) | 駿河の名物の並び |
| 四葬式・五火事 | 日本大百科全書「夢占」の項 | 一般によい夢とされるものの並び |
| 四葬式 | ことわざを知る辞典の使用例(池田弥三郎『暮らしの中のことわざ』1977年) | 夢の言い習わしとして紹介 |
四扇・五煙草・六座頭は、駿河の名物を数え上げた並びの続きです。座頭(ざとう)は、江戸時代に琵琶や三味線を弾き、語り物を語り、あんまやはりを仕事にした、僧の姿をした盲人を指す呼び名です(コトバンク「座頭」)。扇・煙草・座頭がなぜ縁起が良いのかについては、今回確かめた辞書・事典に説明がありませんでした。語呂合わせによる解釈が紹介されることもありますが、出典を確かめられないため、このページでは扱いません。
四葬式・五火事のほうは、夢占いの吉夢の並びです。葬式や火事は現実では避けたい出来事なので、意外に感じるかもしれません。ことわざを知る辞典の使用例では、葬式は縁起が悪いように思えるけれど、夢は逆夢ともいうから、と添えられています。
ただ、火事の夢の扱いは単純ではありません。日本大百科全書の「夢占」の項は、煙だけを見るのはよいが、火を見ると縁起が悪く、ぱっと消えるとなお悪い、という言い伝えも紹介しています。同じ「火事の夢」でも、見え方によって吉にも凶にも読まれてきたことがわかります。
良い初夢を願う習わし ― 宝船の絵と回文の歌
良い初夢を見るための習わしとして、いちばんよく知られているのが宝船です。宝物や米俵を積み、七福神を乗せた船の絵を、正月2日の夜に枕の下に敷いて寝ると良い夢を見る、といわれてきました(コトバンク「宝船」)。
絵には、上から読んでも下から読んでも同じになる回文の歌が書き添えられました。
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
辞書によって「とをの」「ねぶり」など仮名遣いに少し違いがありますが、どれも同じ歌を指しています。
宝船の習わしの移り変わり
辞書・事典の記述をつなぐと、宝船の習わしは次のように変わってきたことがわかります。
- 室町時代:絵を枕の下に敷く風習は、すでに行われていたとされる(日本国語大辞典・日本大百科全書)
- 宮中:帆に「獏」の字を書いた宝船の絵が配られた(日本国語大辞典・世界大百科事典・マイペディア)
- 江戸時代:とくに浮世絵が盛んになる元禄期から庶民に広まり、七福神が加わった(世界大百科事典)。正月には「お宝、お宝」と呼びながら絵を売り歩く宝船売りが現れ、明治時代まで続いた(世界大百科事典・日本大百科全書)
日本国語大辞典によると、現存最古とされる宝船の絵柄は、船に稲穂だけを描いたものです。日本大百科全書は、宝船はもともと宝物や七福神を乗せたものではなく、旧年の災いを船に乗せて流すものだったと説明しています。福を呼ぶ絵になる前は、厄を送り出すための絵だったことになります。
良い夢を見たあとの宝船
日本大百科全書の「夢占」の項によると、悪い夢を見たときは宝船を川に流し、良い夢を見たときは宝船を神仏に納めることもあったそうです。敷いた絵の行き先が、見た夢によって分かれていました。
悪い初夢を見たら ― 昔の人が使ってきた「夢違え」
年の初めに嫌な夢を見ると、一年の幸先が悪いように感じてしまいます。そうした夢が正夢にならないよう、まじないをすることを「夢違え(ゆめちがえ)」といいます(コトバンク「夢違え」)。日本大百科全書は、初夢に関心が集まるにつれて、吉夢を見るまじないと並んで、悪い夢を払う風習も生まれたと書いています。確かめられたものを四つ紹介します。
宝船の絵を川に流す
悪い夢を見たときは、翌朝、枕の下に敷いた宝船の絵を川に流しました(日本国語大辞典・世界大百科事典)。世界大百科事典は、前の年の厄をその絵につけて流し去る意味もあったと説明しています。
獏に夢を食べてもらう
獏は、中国の想像上の動物です。体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、足は虎に似ていて、人の悪い夢を食べるといわれます(コトバンク「貘」)。その姿を描けば邪気を払うとも考えられ、鎌倉時代の延慶本『平家物語』には、獏を絵に描いてお守りにするという記述があります。
悪い夢を見たときは「バクバク」と唱えて獏に夢を食べさせる、という言い伝えもあります(コトバンク「夢占」)。世界大百科事典は、良い夢を見るために獏を描いた紙を枕の下に入れて寝る習わしが宮中や公家を中心に広まり、室町時代には宝船の絵を敷いて寝るようにもなった、と書いています。
南天の木に話す
日本大百科全書の「夢占」の項には、悪い夢を見たら、真っ先に南天(なんてん)の木に話して木を揺すると、難を転じることができる、という言い伝えも載っています。木の名前の「なんてん」に「難を転じる」を重ねた、言葉の縁起による習わしと読めます。
「夢は逆夢」と受け止める
正夢の反対が逆夢(さかゆめ)で、実際には夢と逆のことが起こるといわれる夢です。吉凶を占うときに「夢は逆夢」という言い方がよく使われてきました(コトバンク「逆夢」)。世界大百科事典は、初夢についても、夢は逆夢だといって逆の結果を予想する土地があると書いています。
習わしとの付き合い方
ここで紹介した習わしは、どれも効き目を保証するものではありません。年の初めの落ち着かない気持ちに、昔の人が区切りをつけてきた形です。気持ちを切り替えるきっかけとして借りるくらいの距離で付き合うのがよさそうです。
初夢に出てきたものを、夢占いで読むなら
ここまでの話は、初夢をめぐる言い習わしと歴史です。初夢に出てきた富士山や火事を、いまの夢占いではどう読むのかは、個別の夢のページで扱っています。
| 初夢に出てきたもの | 言い習わしでの位置 | 夢占いでの見方 |
|---|---|---|
| 富士山 | 一富士 | 富士山の夢の意味 |
| 鷹・茄子 | 二鷹・三茄子 | 個別のページはまだありません。夢占い一覧表から近いテーマを探せます |
| 葬式 | 四葬式 | 自分が死ぬ夢の意味の「死んでから自分の葬式を見る夢」 |
| 火事 | 五火事 | 火事の夢の意味 |
| 怖い夢・嫌な夢 | ― | 怖い夢の意味と見る原因 |
夢占いの解釈は、夢を手がかりに自分の状態を振り返るための一つの見方です。初夢の吉凶も同じで、良い夢なら一年の始まりの励みに、嫌な夢なら気になっていることを見直すきっかけにする、という受け止め方ができます。夢占いがどこまで当てになるのかを心理学の視点から整理したページもあるので、気になる人は夢占いは本当に当たる?心理学的検証と正しい活用法もあわせて読んでみてください。
年末年始の準備をまとめて確かめたい人は、お正月2027の開運アイテムと準備で、注連飾りや鏡餅の飾り方を紹介しています。
よくある質問
初夢は大晦日の夜に見る夢ではないのですか?
日本国語大辞典は、大晦日の夜から元日の朝にかけて見る夢も初夢の意味のひとつに挙げています。ただ、デジタル大辞泉は、ふつうは元日または2日の夜に見る夢をいうと説明していて、いまはこちらが一般的です。マイペディアは、除夜に寝ない習慣のためか、江戸中期から元日の夜の夢へ移ったと書いています。
2027年の初夢は何日の夜ですか?
元日の夜の説なら、2027年1月1日(金)の夜から2日(土)の朝にかけての夢です。2日の夜の説なら、1月2日(土)の夜から3日(日)の朝です。宝船の絵を枕の下に敷く習わしは、多くの辞書で正月2日の夜のこととされています。
一富士二鷹三茄子の「鷹」は鳥の鷹ですか?
どの説を採るかで変わります。縁起の言葉を重ねた説では、つかみ取る鳥の鷹です。駿河で高いものを並べた説では、駿河の愛鷹山(足高山)を指します。日本大百科全書は、駿河の名物を並べたという説を最も有力としています。
一富士二鷹三茄子の続きはありますか?
確認できた続きは二つです。江戸時代の国語辞書『俚言集覧』は、駿河の名物として「四扇五煙草六座頭」を続けています。日本大百科全書の「夢占」の項は、よい夢として「四葬式、五火事」を続けています。扇・煙草・座頭が縁起の良い理由は、確かめた辞書には書かれていませんでした。
初夢で悪い夢を見たらどうすればいいですか?
昔は、枕の下の宝船の絵を翌朝川に流す、「バクバク」と唱えて獏に夢を食べさせる、南天の木に話して揺する、といった夢違えの習わしがありました。「夢は逆夢」と受け止める言い方もあります。効き目が保証されたものではないので、気持ちの区切りとして使うのがよさそうです。


